出雲の東、平田の町には江戸時代より「一式飾り」という風習が伝わっている。地元の平田天満宮の夏祭に陶器などを使って、何かの形に見立てた作り物を奉納して、町のあちこちに一式飾りが飾られる。ひとつひとつは単なる食器や壺にすぎないのに、組み上げられたその造形はよくぞここまで見立てたと感動することひとしきり。
98年秋、初めて平田の町を訪れた。夏祭はとうに終わっていたが、いくつかの作品は町に常設されている一式飾り展示館で見ることができた。そこで待っていた驚異の世界にもう目が釘付け!
これが「一式飾り」だ!!
「桜田門外の変」、「不動明王」、もうそれにしか見えない見事な造形!もう一度言っておきますけど、これ全部単なる普通の陶器で出来てるんですよ!
不動明王アップ。燃えさかる火炎に見えたものは、なんと魚の置物の大群!髪の毛も顔も剣だってみーんな陶器。全て陶器だけを組み合わせて作られているのだ。一式飾りの真髄は陶器なら陶器だけを使うといった、一つの素材のみを使って作ることにあり、そのように作られたものを一式飾りというのである。(もちろん他の素材を使った一式飾りもあるので、あとで紹介したい)
ズズーンと陶器のビルの間から姿を現した「ゴジラ」。ゴツゴツした顔の正体はカエルの置物を組み合わせたもの。感じ出てる~。
「縁台将棋」。こんな生活の何気ない場面も再現。
夕涼みの談笑が聞こえてきそうな味のある一品。
こちらは旧本陣記念館のロビーに飾られた「おろち退治」。神話の里にふさわしいスケールの大きい作品。空飛ぶ湯たんぽが対決のおどろおどろしい背景に早変わり。龍の鼻もカニの置物。見事な見立てだ。
地元の高校生による作品も。高校生ならではのユニークな作品がズラリ。こうして伝統が受け継がれていくのはいいですねえ~。
以上が98年に訪れた時のレポートである。紹介したこれらの作品の大部分はもう見ることはできない。祭りが終われば再びバラされ、元の陶器へと戻る。それが何ともいえない哀愁があり、またそれも一式飾りの魅力なのかもしれない。まさに一瞬の美。
さて今年の秋、再び平田を訪れた。現在は合併して出雲市となっている。早速一式飾り展示館へと向かったところ、なんと一式飾り展示館、全く別の施設になってました・・・。ぎょ――ん!
それではと「おろち退治」のある旧本陣記念館へと行ってみると、こちらの「おろち退治」は健在でホッ。館の人に聞いてみたところ、一式飾り展示館は数年前に閉鎖してしまったとのこと、ううう・・・。しかし話をさらに聞くと、新しく町の商店街に一式飾りが飾られているとの話。おおおお~、再び希望の光が~~~。
ということで、町の商店街に向かうと・・・、

おお~~!一式飾り!会いたかったよ~~!
陶器一式「弁慶と牛若丸」。背景の書き割りがいい味出している。以前の展示館よりも屋外でのこうした展示の方が祭りの雰囲気ぽくていいかも。
「恵比寿」「大黒天」。一式飾りの伝統的なモチーフ。
商店街に福を呼びこむぞ~~。
こちらも福の神「弁財天」。
そしてこちらは「仏具一式」。顔や手は木魚でできている。
「海老」。なんと「自転車部品一式」!ついに素材もここまで進化した!こちらは以前の一式飾り展示館でも飾られていた傑作。
「C3PO」。顔は湯たんぽ!でもC3POにしか見えない~!こちらも地元高校生たちによる作品。
伝統的なモチーフだけでなく、こういう新しいモチーフもありで、ほんと一式飾りは無限の可能性を秘めていると思う。
こちらは最新作「藍ちゃん」。ナイスショット!
でも藍ちゃん、でべそだったりして・・・。
「チャップリン」。顔のパーツも側に寄って見ればもちろん陶器。もうチャップリンのチョビヒゲ顔そのまんま!
「ゲゲゲの鬼太郎」。まさに平田版水木しげるロード!
目玉おやじがナイス!「父さん、すごいですよ!」

これぞ、命無き道具たちに熱き魂を吹き込む平田一式飾りの世界。
(1998年10月、2006年9月)